4 ワールド・トレード・センター

4 WTCはスタジオ・ダニエル・リベスキンドの“メモリー・ファウンデーションズ”というマスタープランに基づいて建てられた超高層ビルの一つである。元々16エーカーあった世界貿易センタービル跡地に、ナショナル9.11メモリアル・パークを取り巻くように立ち並ぶ5棟の高層ビル群の中の4番目の建物として、最初に完成した。グリニッチ、チャーチ、コートランド、そしてリバティの4つの通りが交わる都会の一ブロックを占める敷地でありながら、二つの公園が隣接した恵まれた環境をもつ、マンハッタンでも稀有な場所である。建物の西側にメモリアル・パーク、南東の角にはズコッティ公園があり、ウォール街とロウアー・マンハッタンへの玄関口ともいえる檜舞台にたっている。

高さ977フィート(298m)の72階建てで、213,700平方メートルのオフィス・商業スペースを有している。56層あるオフィスは明快な2種類のフロア形状となっており、垂直方向では、大きく3層構成で建物が構成されている。オフィスの低・中層階では、2種類のフロアのうちの大きい方のレンタル面積は4,090平方メートルの広さで、敷地の形に呼応して平行四辺形となっている。高層階は2,980平方メートルの広さの台形となっており、上層階に向かって彫刻的な鋭角な輪郭を創りだすようにしている。そのフォルムは、プロジェクト全体のマスタープランの中で与えられた、螺旋状の回転軸の役割を果たすようにしている。

タワー全体は、静かな佇まいの中にも力強い彫刻的表現を創り出すデザインとなっている。離れた場所からみても、超高層ビル群のスカイラインの中でも角ばった輪郭が際立つ、ミニマリズムな彫刻のように見える。反射率の高い特殊Low-eコートを施した純粋なシルバー色のガラスを身にまとい、その日の時間・天気・陽光によって外観を劇的に変化させる。そして、特異な彫刻的作品だったものが、光沢のあるメタリックな材質感のため空に溶け込み、空の一部であるかのように変容する。外装に使用されている11,000ユニットものカーテン・ウォールの各ユニットは、幅5フィート(1.5m)で縦13フィート6インチ(4.1m)の1枚もののガラスとなっており、層間区画の水平マリオンをガラス背後で納めるタッチマリオン方式とすることで、デザインにおける高度な抽象表現を可能にしている。

タワーとは逆に基壇部は、近くからみると、空間構成や素材感、色彩、洗練されたディテールによって一つの建築物として存在感を示している。タワーの麓に立つと、一つの完成された巨大建築物であることを判別することはできない。純粋な彫刻作品とは異なり、視覚的のみならず豊かな空間体験をすることで感じられる場の存在感をもたらしてくれる建築物である。

所在地: アメリカ ニューヨーク 
完成年: 2013
用途: オフィス, 商業
主要構造: 鉄筋コンクリート造, 鉄骨造
階数: 72階
敷地面積: 53,800平方フィート
建築面積: 52,500平方フィート
延床面積: 2,300,000平方フィート
設計協力: AAI Architects(Tower), Beyer Blinder Belle Architects & Planners (Retail)
構造設計: Leslie E. Robertson Associates
設備設計: Jaros Baum & Bolles Consulting Engineers(Tower), AKF Engineers(Retail)
■ URL
http://www.wtc.com/
■ 掲載誌
新建築:2014.1
Fumihiko Maki(PHAIDON)
新建築:2011.9, 2008.5別冊 [IN PROGRESS]
a+u:2012.7 臨時増刊
■ Awards / Competition
IAA アニュアル プライズ(2013)
AIA ニューヨーク建築賞(2014)
DAM国際高層建築賞(2016)